お気に入りのフィギュアを長く楽しむために、素材について詳しく知りたいと思ったことはありませんか?
多くの製品で使われているフィギュア PVCという素材について、PVCはゴムですか?といった素朴な疑問から、なぜPVCはダメなのでしょうか?という少し気になる意見の真相まで、様々な情報が飛び交っています。
特に、PVC素材は劣化しやすいですか?という点や、フィギュアの寿命はコレクターにとって大きな関心事です。また、フィギュア ABSやPVC ABSといった表記の違い、基本的な作り方や塗装方法、破損した際のフィギュア 素材 pvc 接着剤の選び方、さらにはお湯を使った簡単な修復方法まで、知りたいことは多岐にわたるでしょう。
この記事では、そんなフィギュアのPVCに関するあらゆる疑問を解消し、大切なコレクションとより良く付き合っていくための知識を網羅的に解説します。
- フィギュアの主な素材PVCとABSの基本的な違い
- PVC素材が劣化する原因とその寿命を延ばす方法
- お湯や接着剤を使った簡単なメンテナンスや補修のコツ
- PVCフィギュアに関するよくある疑問や誤解の真相
フィギュアPVCの基本と素材特性
- PVCはゴムですか?その質感と違い
- フィギュアの基本的な作り方を知ろう
- 一般的なフィギュアの塗装方法とは
- PVC ABSの違いとそれぞれの役割
- フィギュア ABS素材の特徴と使われ方
PVCはゴムですか?その質感と違い

フィギュアの素材として最も目にする機会が多い「PVC」ですが、「PVCはゴムですか?」という疑問を持つ方は少なくありません。結論から言うと、PVCはゴムではなく、「ポリ塩化ビニル」という熱可塑性プラスチックの一種です。
ではなぜ、ゴムのような柔らかい質感を持つ製品があるのでしょうか。その理由は、製造過程で「可塑剤(かそざい)」という添加物を加えることで、素材の硬さを自由に調整できるからです。この特性により、水道管のような硬い製品から、フィギュアの髪や衣装のような、しなやかさが求められるパーツまで幅広く対応できます。
ちなみに、同じく柔らかいフィギュア素材である「ソフビ(ソフトビニール)」も主原料はPVCですが、製造方法が異なります。ソフビは「スラッシュ成形」という製法で中空に作られるのに対し、一般的なPVCフィギュアは金型に樹脂を流し込む「射出成形」で作られるため、中まで詰まっているのが特徴です。
このように、PVCはゴムとは全く異なるプラスチック素材であり、その加工性の高さからフィギュア製作において中心的な役割を担っているのです。
フィギュアの基本的な作り方を知ろう
市販されている塗装済み完成品フィギュアは、非常に精巧なプロセスを経て作られています。その基本的な作り方を理解することで、フィギュアへの愛着も一層深まるかもしれません。
まず、全ての始まりは原型師が制作する「原型(マスターモデル)」です。この粘土やパテなどで作られた手作業の原型が、製品のクオリティを決定づける最も重要な工程と言えます。
次に、この原型を基にして「金型」が作られます。金型は非常に高価ですが、一度作れば同じ形のパーツを何万個と生産できるため、大量生産には不可欠です。
そして、熱で溶かしたPVC樹脂を金型に高圧で流し込み、冷却して固める「射出成形」によって、フィギュアの各パーツが成形されます。髪、顔、胴体、手足など、色や形の異なる部分が別々のパーツとして作られます。
最後に、成形された各パーツを塗装し、一つひとつ手作業で組み立てて完成です。単純な流れに見えますが、各工程で専門の職人による精密な作業が行われることで、私たちが手にする高品質なフィギュアが生まれるのです。
一般的なフィギュアの塗装方法とは

フィギュアの魅力を最大限に引き出す塗装は、非常に繊細で高度な技術が求められる工程です。一般的な塗装済み完成品フィギュアでは、主に「マスキング塗装」と「タンポ印刷」という二つの技術が中心的に用いられています。
マスキング塗装は、塗装したくない部分をテープなどで覆い(マスキング)、特定の色だけを吹き付ける方法です。キャラクターの服の模様や異なる色が隣接する部分など、境界線をはっきりと塗り分ける際に使われます。これを何度も繰り返すことで、複雑なカラーリングが再現されます。
一方、キャラクターの命とも言える「目」や、細かいロゴなどの再現には「タンポ印刷」という技術が欠かせません。これは、デザインが彫られた版からシリコン製のパッドにインクを転写し、スタンプのようにパーツに押し付けて印刷する方法です。この技術のおかげで、手作業では困難な、均一で精密な表情の大量生産が可能になっています。
また、肌などには材料自体の色を活かす「成形色」を使い、髪や服には陰影をつけて立体感を出す「シャドウ吹き」や「グラデーション塗装」を施すなど、様々な技法を組み合わせて、フィギュアに生命感が吹き込まれています。
PVC ABSの違いとそれぞれの役割
フィギュアの製品情報を見ると、「PVC・ABS製」といった表記をよく目にします。これは、PVCとABSという二種類のプラスチックが、それぞれの特性を活かして適材適所で使われていることを示しています。
この二つの素材の違いを理解することが、フィギュアの構造を知る上で鍵となります。
素材特性の比較
PVCとABSの主な違いは、「柔軟性」と「硬度」です。
特性 | PVC(ポリ塩化ビニル) | ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) |
主な特徴 | 柔軟性が高く、加工しやすい | 硬度と強度に優れ、衝撃に強い |
質感 | 柔らかく、しなやか | 硬く、カッチリしている |
主な用途 | キャラクターの身体、髪、衣装など | 武器、小物、関節パーツ、台座など |
メリット | 複雑な形状や曲線を表現しやすい | 形状が安定し、変形しにくい |
デメリット | 熱に弱く、変形しやすい | 柔軟性に欠け、塗装が乗りづらい場合がある |
このように、キャラクターのしなやかな体のラインや、風になびく髪の毛のような柔らかい表現が求められる部分にはPVCが適しています。一方で、シャープな形状が求められる武器や、フィギュア全体を支える台座、可動フィギュアの関節など、強度と精度が必要な部分にはABSが用いられるのが一般的です。
これらの素材を巧みに使い分けることで、フィギュアの造形美と耐久性の両立が実現されているのです。
フィギュア ABS素材の特徴と使われ方

前述の通り、ABSはPVCと並んでフィギュア製作に欠かせない素材ですが、ここではABSに焦点を当てて、その特徴と具体的な使われ方をさらに詳しく見ていきましょう。ABSは、強度、耐衝撃性、加工性に優れた硬質のプラスチックです。
この素材の最大の利点は、その頑丈さにあります。衝撃に強く、変形しにくいため、フィギュアの構造的な安定性を求められる箇所で活躍します。例えば、美少女フィギュアが手に持つ細い杖や剣、ロボットフィギュアのアンテナといった、PVCでは自重で曲がってしまったり、破損しやすかったりするパーツに最適です。
また、可動フィギュアの関節部分にも多用されます。何度も動かすことを前提とした関節パーツには、摩耗に強く、カッチリとした保持力が求められるため、ABSの特性が存分に活かされています。
一方で、ABSにも注意点があります。PVCに比べて塗装の食いつきが良くない場合があるほか、長期間強い紫外線に当たると劣化して脆くなる性質(UV劣化)があります。そのため、ABSパーツが多く使われているフィギュアを直射日光の当たる場所に飾るのは避けるのが賢明です。
フィギュアPVCの注意点とメンテナンス
- なぜPVCはダメなのでしょうか?の真相
- PVC素材は劣化しやすいですか?の疑問
- フィギュアの寿命を延ばす保管方法
- お湯でパーツの歪みを修正する方法
- フィギュアの素材 PVCの接着剤の選び方
なぜPVCはダメなのでしょうか?の真相

インターネットなどで情報を集めていると、「PVCはダメ」といった意見を目にすることがあり、不安に思う方もいるかもしれません。しかし、この意見にはいくつかの背景や誤解が含まれています。その真相を理解し、正しく判断することが大切です。
「ダメ」と言われる理由の一つに、過去の環境問題への懸念がありました。かつてPVCは、焼却する際に有害なダイオキシンが発生する可能性があると指摘されていました。しかし、これは低温での不完全燃焼の場合であり、現在の高性能な焼却炉では適切に処理されるため、問題ないとされています。
もう一つの大きな理由が、経年劣化による「ベタつき」です。これは、PVCを柔らかくするために添加されている可塑剤が、時間と共に気化して表面に染み出てくる現象です。
未開封のまま長期間保管したり、高温多湿の環境に置いたりすると発生しやすくなります。このベタつきが「PVCはダメ」という印象につながっている面は否定できません。
しかし、現在のフィギュアに使われているPVCは、安全性を高めた「非フタル酸系」が主流です。また、ベタつきに関しても、風通しの良い場所に飾る、定期的にお手入れをするといった対策で、発生を抑制したり、取り除いたりすることが可能です。
したがって、「PVCはダメ」と一概に決めつけるのは、現在の状況には即していないと言えるでしょう。
PVC素材は劣化しやすいですか?の疑問
「PVC素材は劣化しやすいですか?」というのも、フィギュアコレクターが抱く共通の不安です。結論から言えば、どんな素材も永遠ではなく、PVCも特定の条件下では劣化しますが、その性質を理解し正しく扱うことで、非常に長く美しい状態を保つことが可能です。
PVCフィギュアの主な劣化要因は以下の3つです。
- 紫外線太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線は、PVCの分子構造を破壊し、色褪せ(退色)や変色の原因となります。また、素材自体が脆くなることもあります。
- 熱PVCは熱に弱い性質を持っています。夏の車内のような高温環境や、暖房器具の近くに置くと、パーツが軟化して歪んだり、変形したりする恐れがあります。
- 湿気と可塑剤前述の通り、PVCに含まれる可塑剤は時間と共に気化します。高温多湿の環境や、通気性の悪い密閉された空間では、この気化した可塑剤が逃げ場を失い、フィギュアの表面に付着してベタつきの原因となります。
これらの要因は、プラスチック製品全般に共通する弱点でもあります。つまり、PVCが特別に劣化しやすいわけではなく、その弱点を知り、適切な対策を講じることが、フィギュアを長持ちさせる鍵となるのです。
フィギュアの寿命を延ばす保管方法

大切なフィギュアの寿命を延ばし、購入時の美しさを長く保つためには、日々の保管方法が非常に重要になります。劣化の要因である「紫外線」「熱」「湿気」をいかに避けるかがポイントです。
最も効果的なのは、専用のコレクションケースに飾ることです。特にUVカット機能が付いたアクリルケースは、最大の敵である紫外線を大幅に軽減してくれるため、色褪せ防止に絶大な効果を発揮します。
ケースを置く場所も慎重に選ぶ必要があります。窓際は直射日光が当たるため絶対に避けましょう。また、部屋の照明が直接フィギュアに当たり続けるのも良くありません。できるだけ部屋の奥まった、光が直接届かない涼しい場所を選ぶのが理想的です。
湿気対策も忘れてはなりません。風通しの良い場所に飾り、定期的にケースの扉を開けて空気を入れ替えることをお勧めします。また、ホコリは湿気を吸ってフィギュアに固着し、カビや劣化の原因にもなるため、柔らかいブラシなどでこまめに掃除することも大切です。
これらの少しの手間をかけるだけで、フィギュアの寿命は格段に延びます。愛情を持ってメンテナンスすることが、コレクションを末永く楽しむための秘訣です。
お湯でパーツの歪みを修正する方法
PVCフィギュアを飾っていると、パーツの重みや夏の暑さで、剣や髪の毛の先端などが少し曲がってしまうことがあります。このような軽度の歪みは、PVCが熱で柔らかくなる性質を利用して、家庭にある「お湯」で簡単に修正できる場合があります。
修正の手順
- 準備: 80℃前後のお湯を、パーツが浸かる深さのある容器(マグカップなど)に用意します。沸騰したてのお湯は温度が高すぎてパーツを傷める可能性があるので、少し冷ましてから使いましょう。
- 軟化: 歪んだパーツの部分だけをお湯に10秒~30秒ほど浸します。すると、PVCがふにゃりと柔らかくなります。
- 成形: パーツが十分に柔らかくなったらお湯から取り出し、火傷に注意しながら手で優しく元のまっすぐな形に整えます。
- 冷却: 正しい形に整えたら、そのままの状態で冷水に浸けて一気に冷やします。これにより、整えた形でPVCが再び硬化し、形状が固定されます。
注意点
この方法は手軽ですが、注意も必要です。塗装がデリケートな部分や、細すぎるパーツは、作業中に塗装が剥げたり、破損したりするリスクが伴います。
また、高価なフィギュアや限定品で行う際は、あくまで自己責任となります。まずは比較的安価なフィギュアなどで試してから行うことをお勧めします。
フィギュアの素材 PVCの接着剤の選び方

フィギュアの細いパーツが折れてしまった時、どの接着剤を使えばよいか迷うことがあるでしょう。PVC素材は、一般的な工作用の接着剤では付きにくい性質があるため、適切な製品を選ぶことが修復の成功を左右します。
フィギュアのPVC素材の接着には、主に2種類の接着剤が適しています。
一つは、「塩化ビニル樹脂用」と明記された専用の接着剤です。これはPVCを溶かして接着するタイプで、強力に固定できますが、はみ出すとパーツ表面を溶かしてしまうため、精密な作業が求められます。
もう一つは、より手軽で一般的に使われる「瞬間接着剤(シアノアクリレート系)」です。ただし、瞬間接着剤を選ぶ際にもポイントがあります。
PVCのようなプラスチックは表面エネルギーが低く、接着剤が弾かれやすい(付きにくい)性質があります。そのため、プラスチック用の「プライマー」が付属したタイプを選ぶと、接着強度を格段に高めることができます。プライマーを先に接着面に塗ることで、瞬間接着剤がしっかりと食いつくようになります。
また、細かいパーツを接着する際は、すぐに硬化する液体タイプよりも、位置決めしやすい「ゼリー状」や「高粘度タイプ」の瞬間接着剤が作業しやすく、おすすめです。いずれの接着剤を使用する場合も、接着面をきれいに清掃し、脱脂してから作業することが成功の鍵となります。
まとめ:フィギュア PVCとの上手な付き合い方
この記事では、フィギュアの主要素材であるPVCに関する様々な情報を解説しました。
最後に、大切なコレクションと末永く付き合っていくためのポイントをまとめます。
- PVCはゴムではなく「ポリ塩化ビニル」というプラスチックの一種
- 可塑剤の添加により、硬さを自由に調整できるのがPVCの大きな特徴
- フィギュア本体のしなやかな部分にはPVCが主に使われる
- ABSはPVCより硬く、武器や台座など強度が必要な部分に使用される
- フィギュアは原型師が作った原型を基に金型で大量生産される
- 目の塗装など精密な部分にはタンポ印刷という技術が使われている
- 「PVCはダメ」という意見は過去の環境問題やベタつきが原因の誤解を含む
- 現在のPVCフィギュアは安全性や環境に配慮して作られている
- PVCの主な劣化要因は「紫外線」「熱」「湿気」の3つ
- 直射日光や高温多湿を避けることが寿命を延ばす基本
- UVカット機能付きのケースは色褪せ防止に非常に効果的
- 可塑剤によるベタつきは風通しの良い場所で保管すれば予防できる
- パーツの歪みは80℃程度のお湯で温めると修正できる場合がある
- 破損した際の接着にはPVC専用かプライマー付きの瞬間接着剤を選ぶ
- 素材の特性を正しく理解し、適切に扱えばPVCフィギュアは長く楽しめる