お気に入りのキャラクターフィギュアを手に入れた時の喜びは格別ですが、同時に「このフィギュアがいつか劣化してしまったら…」という不安を感じる方も多いのではないでしょうか。大切なコレクションだからこそ、いつまでも美しい状態で保ちたいものです。
フィギュアの劣化に関する悩みは尽きません。例えば、表面がベタベタしてきたり、いつの間にかほこりがこびりついてしまったり。一体何年くらいで劣化は始まるのか、未開封で保管しておけば大丈夫という話はガセなのか、多くの方が疑問に思っています。
インターネットの掲示板、例えばなんJなどでも、フィギュアを劣化させないためにはどうすれば良いか、様々な情報が飛び交っています。ポリストーン製のフィギュアは劣化しにくいという話や、市販の劣化防止スプレーの効果、具体的な劣化対策など、気になる情報はたくさんあるでしょう。
この記事では、そうしたフィギュアの劣化に関するあらゆる疑問にお答えします。劣化の根本的な原因から、今日から実践できる具体的な対策、そして正しい保管方法まで、専門的な知識を分かりやすく解説します。あなたの大切なフィギュアを長く楽しむためのヒントが、ここにあります。
- フィギュアが劣化する具体的な原因
- 素材や保管状況による劣化の違い
- 日常で実践できる正しい劣化対策
- 大切なフィギュアを長持ちさせる保管方法
様々な要因で起こるフィギュア劣化の原因
- フィギュアは何年くらいで劣化し始める?
- 未開封なら安心?未開封の劣化はガセじゃない
- 可塑剤が原因のフィギュアのベタベタ
- 大敵であるほこりの付着とその影響
- 劣化に強いポリストーン製フィギュアとは
フィギュアは何年くらいで劣化し始める?

フィギュアが何年で劣化し始めるかについては、一概に断言することは難しいのが実情です。なぜなら、フィギュアの素材や製造方法、そして何よりも保管されている環境によって、劣化のスピードは大きく異なるからです。
ただ、一般的な目安として、適切な環境で保管していても数年経過すると何らかの変化が見られ始めるケースは少なくありません。例えば、インプットされた情報の中には、購入から3~4年で塗装の一部が溶け出した例や、蛍光灯の近くに10年ほど飾っていたことで変色してしまったという体験談がありました。
フィギュアの多くはPVC(ポリ塩化ビニル)やABSといったプラスチック素材で作られています。これらの素材は、その性質上、時間とともに必ず劣化していきます。これを経年劣化と呼び、完全に防ぐことはできません。
したがって、フィギュアは数年単位で少しずつ劣化が進行していくもの、と考えるのが現実的です。しかし、後述する正しい知識を持って対策を講じることで、その進行を大幅に遅らせ、美しい状態をより長く維持することは十分に可能です。
未開封なら安心?未開封の劣化はガセじゃない
「未開封のまま保管しておけば、購入時の状態を維持できる」という考えは、フィギュアコレクターの間で広く信じられていることがありますが、残念ながらこれは誤解であり、むしろ劣化を早める可能性があるため「ガセ」情報に近いと言えます。
その理由は、フィギュアの箱の中にあります。未開封の箱は一見すると外部のほこりや紫外線からフィギュアを守ってくれるように思えます。しかし、内部は密閉された空間となっており、空気の循環がほとんどありません。この環境が、フィギュアの素材に含まれる「可塑剤(かそざい)」という物質に悪影響を及ぼすのです。
可塑剤は、硬いプラスチックを柔らかくするために添加される化学物質ですが、時間とともに気化する性質を持っています。通気性のない箱の中では、気化した可塑剤が逃げ場を失って充満し、再びフィギュアの表面に付着してしまいます。
これが、フィギュアがベタベタになる主な原因です。また、高温多湿の状態も招きやすく、変色や変形の引き金にもなりかねません。
実際に、大手フィギュアメーカーであるグッドスマイルカンパニーも、公式サイトで未開封での長期保管を推奨していません。未開封のままでは、万が一の破損やパーツの欠品といった初期不良に気づくことができず、保証期間が過ぎてしまうリスクもあるのです。
これらの理由から、フィギュアは購入後一度開封し、状態を確認した上で適切に保管することが推奨されます。
可塑剤が原因のフィギュアのベタベタ

フィギュアを久しぶりに触ったら表面がネバネバ、ベタベタしていた、という経験は多くのコレクターが直面する問題です。この不快なベタつきの主な原因は、フィギュアの素材であるPVC(ポリ塩化ビニル)に含まれる「可塑剤」という化学物質にあります。
もともとPVCは硬いプラスチックですが、フィギュアのしなやかな体のラインや衣装の柔らかさを表現するために、可塑剤を添加して柔軟性を持たせています。この可塑剤は安定した物質ではなく、時間の経過とともにフィギュアの内部から少しずつ気化して表面に染み出してくる性質を持っています。
特に、高温多湿の環境や、前述の通り未開封の箱のような密閉空間では、可塑剤の気化と液化が促進されます。逃げ場を失った可塑剤がフィギュアの表面に留まり、空気中の湿気やほこりと結びつくことで、あの独特のベタつきが発生するのです。
このベタつきは、見た目が悪いだけでなく、塗装を溶かしたり、ほこりを固着させたりする原因にもなり、フィギュアの劣化をさらに進行させる要因となります。要するに、フィギュアのベタつきは素材の特性上避けにくい現象であり、いかに可塑剤をフィギュア表面に留まらせないようにするかが、保管における一つの鍵となります。
大敵であるほこりの付着とその影響
ケースに入れずにフィギュアを飾っていると、どうしても付着してしまうのがほこりです。一見すると、ただ汚れて見えるだけのほこりですが、実はフィギュアの劣化を促進する大敵と言えます。
ほこりは単なる塵や繊維の集まりではありません。空気中に浮遊する様々な化学物質や湿気を含んでいます。このほこりがフィギュアの表面に長時間付着し続けると、いくつかの悪影響を及ぼします。
まず、ほこりが湿気を吸着することで、フィギュア表面の湿度が高い状態が続きます。これはカビが発生する絶好の環境であり、一度カビが生えてしまうと除去は非常に困難です。
また、可塑剤が染み出しているフィギュアの表面にほこりが付着すると、ベタつきと絡み合って固着してしまいます。こうなると、単にブロワーで吹き飛ばすだけでは取れなくなり、無理に擦って落とそうとすると塗装を傷つけてしまう恐れがあります。
このように、ほこりは美観を損なうだけでなく、カビや汚れの固着といった、より深刻なダメージの引き金となるのです。フィギュアを美しく保つためには、ほこりが積もる前に定期的に取り除く習慣が大切です。
劣化に強いポリストーン製フィギュアとは

フィギュアの素材はPVCやABSが主流ですが、中には「ポリストーン」または「コールドキャスト」と呼ばれる素材で作られた製品もあります。このポリストーンは、一般的なプラスチック製フィギュアに比べて経年劣化に強いという大きなメリットを持っています。
ポリストーンは、石の粉末(石粉)と合成樹脂(ポリエステル樹脂など)を混ぜ合わせて作られる素材です。そのため、プラスチック特有の柔軟性はなく、陶器に近い硬く重い質感が特徴です。
最大の利点は、経年劣化の主な原因である可塑剤を含んでいない点です。これにより、PVC製フィギュアで問題となる表面のベタつきや、熱による変形がほとんど起こりません。ずっしりとした重量感と硬質な手触りは、高級感を演出し、特定のコレクターから高い支持を得ています。
一方で、デメリットも存在します。ポリストーンは非常に硬い反面、衝撃には弱く、落下させると陶器のように割れたり欠けたりしやすい性質を持っています。細いパーツなどは特に破損しやすいため、取り扱いには細心の注意が必要です。
以下の表に、PVCとポリストーンの主な違いをまとめました。
特徴 | PVC(ポリ塩化ビニル) | ポリストーン(コールドキャスト) |
主な劣化要因 | 熱、紫外線、可塑剤によるベタつき | 衝撃による破損、落下 |
柔軟性 | 高い(細いパーツも折れにくい) | 低い(硬いが割れやすい) |
重量 | 比較的軽い | 重い(高級感がある) |
熱への耐性 | 弱い(変形しやすい) | 比較的強い |
経年変化 | 変色、ベタつきが起こりやすい | 比較的少ない |
価格帯 | 幅広い | 比較的高価な傾向 |
このように、素材によって一長一短があります。ご自身のコレクションの目的や保管環境に合わせて、素材の特性を理解しておくことが大切です。
大切なコレクションを守るフィギュア劣化の防ぎ方
- フィギュアを劣化させないためには?基本を解説
- 日常でできる具体的な劣化対策とは
- なんJでも議論されるフィギュアの保管方法
- 市販の劣化防止スプレーの効果と注意点
- 適切な保管でフィギュア劣化を遅らせよう
フィギュアを劣化させないためには?基本を解説

フィギュアを劣化させないためには、まず劣化を引き起こす主な原因を知り、それらを避ける環境を整えることが全ての基本となります。フィギュアにとっての「天敵」は、大きく分けて4つあると考えられます。
一つ目は「光」、特に太陽光や蛍光灯に含まれる紫外線です。紫外線は、人間が日焼けするのと同じように、フィギュアの塗装の色を褪せさせたり(退色)、プラスチック素材そのものを変質させて黄色っぽく変色させたりする原因となります。
二つ目は「熱」です。多くのフィギュアに使われるPVCは熱に弱い性質を持っています。夏の室温や直射日光が当たる場所など、高温下に置かれると素材が柔らかくなり、自重で傾いたり、細いパーツが曲がったりする変形を引き起こします。
三つ目は「湿気」です。高い湿度は、カビの発生を促す最大の要因です。また、可塑剤によるベタつきを助長させることにも繋がります。
四つ目は「物理的なストレスや汚れ」です。これには、落下などの衝撃による破損や、前述したほこりの付着による汚染が含まれます。
これらのことから、フィギュアを劣化させないためには、これらの4つの天敵からいかにフィギュアを守るか、という視点が不可欠です。「光と熱を避け、風通しの良い場所に、ほこりを被らないように飾る」。これが、大切なフィギュアを長持ちさせるための最も基本的な考え方と言えるでしょう。
日常でできる具体的な劣化対策とは
フィギュアの劣化を遅らせるためには、日々の少しの心がけが大きな差を生みます。ここでは、ご家庭ですぐに実践できる具体的な劣化対策を、要因別に解説します。
光(紫外線)対策
光、特に紫外線からフィギュアを守ることは最も重要な対策の一つです。
まず、直射日光が当たる窓際や、その近くにフィギュアを飾るのは絶対に避けましょう。部屋のレイアウト上どうしても窓際に置く場合は、遮光カーテンやUVカット機能のあるカーテン、窓に貼るUVカットフィルムなどを活用するのが効果的です。
また、見落としがちなのが室内照明の光です。従来の蛍光灯は微量の紫外線を発しているため、長時間フィギュアを照らし続けると色褪せの原因になり得ます。可能であれば、紫外線放出量が非常に少ないLED照明に交換することをお勧めします。コレクションケース内に照明を設置する場合も、LEDライトを選ぶのが賢明です。
熱・湿気対策
日本の夏場の高温多湿な環境は、フィギュアにとって非常に過酷です。
理想的なのは、エアコンで温度と湿度が一定に管理された部屋で保管することです。それが難しい場合でも、少なくとも風通しの良い、涼しい場所を選んで飾るようにしてください。空気がこもりがちなクローゼットや押し入れに箱のまま保管する場合は、定期的に扉を開けて換気し、除湿剤を一緒に入れておくことが大切です。
特に夏場、留守にする際にエアコンを切ると室内が高温になるため、細いパーツを持つフィギュアが変形するリスクが高まります。長期間家を空ける際などは、特に注意が必要です。
ほこり対策
ほこり対策で最も効果的なのは、フィギュアを専用のコレクションケースやディスプレイケースに入れて飾ることです。ケースに入れることで、ほこりが直接付着するのを防ぐだけでなく、物理的な衝撃からも守ってくれます。
ケースに入れずに飾っている場合は、定期的な清掃が欠かせません。清掃には、カメラレンズ用のエアーブロワーでほこりを吹き飛ばしたり、プラモデル用の柔らかいブラシや化粧用の筆などで優しく撫でるように取り除くのがお勧めです。
ティッシュなどで強く擦ると、静電気が発生して余計にほこりを寄せ付けたり、細かな傷をつけたりする可能性があるので避けましょう。
なんJでも議論されるフィギュアの保管方法

フィギュアの保管方法は、コレクターにとって永遠のテーマの一つであり、インターネット上の掲示板、例えば「なんJ(なんでも実況J)」のようなコミュニティでも、しばしば活発な議論が交わされています。そこでは、公式な情報だけでなく、ユーザーたちの経験に基づいた様々な意見や工夫が共有されています。
例えば、「フィギュアは箱から出すべきか、出さないべきか」という論争は代表的なものです。「箱のままが価値を保てる」という意見に対し、「未開封だと可塑剤で劣化するから出すべき」という意見がぶつかります。
この記事で解説している通り、劣化防止の観点からは開封して適切に管理するのが望ましいと考えられますが、将来的な売却などを視野に入れると悩ましい問題です。
また、ディスプレイケースの素材についても、「透明度が高いアクリル製が良い」「高級感があり傷に強いガラス製が良い」など、好みや予算に応じた様々な意見が見られます。
中には、地震対策として「ミュージアムジェルで固定している」といった具体的なノウハウや、「100円ショップのアイテムを工夫してディスプレイしている」といったアイデアも共有されており、参考にできる点も多くあります。
ただし、これらの情報はあくまで個人の経験則や伝聞に基づくものが大半です。中には科学的根拠の乏しい情報や、誤った情報が含まれている可能性も否定できません。
そのため、ネット上の情報を鵜呑みにするのではなく、この記事で解説するような基本的な知識をベースに、あくまで一つの参考として捉え、自分に合った方法を見つけることが賢明です。
市販の劣化防止スプレーの効果と注意点
フィギュアの劣化対策を調べていると、市販の「劣化防止スプレー」や「UVカットスプレー」の使用を勧める情報を見かけることがあります。これらは一定の効果が期待できる一方で、使用にはリスクも伴うため、慎重な判断が必要です。
これらのスプレーの主な効果は、含有される成分によって紫外線をカットし、塗装の色褪せを防ぐというものです。模型用として販売されている製品もあり、スプレーすることでフィギュアの表面に保護膜を形成します。
しかし、使用する際にはいくつかの注意点があります。第一に、これらのスプレーは全てのフィギュアに使えると保証されたものではありません。フィギュアの塗装や素材(特にPVC)との相性によっては、塗料を溶かしてしまったり、表面を侵してベタつきを悪化させたりする可能性があります。
第二に、均一にスプレーするのは意外と難しく、吹きムラができてしまうと見た目が損なわれてしまいます。また、つや消し、半光沢、光沢といった種類があり、元のフィギュアの質感を大きく変えてしまうこともあります。
多くのフィギュアメーカーは、このような外部製品の使用を推奨していません。もし使用を検討する場合は、必ず目立たない部分で試してから、自己責任で行うという覚悟が必要です。基本的には、スプレーに頼るよりも、前述したような保管環境を整える対策を優先するのが最も安全で確実な方法と言えるでしょう。
適切な保管でフィギュア劣化を遅らせよう

この記事では、フィギュアが劣化する原因から具体的な対策までを詳しく解説してきました。最後に、大切なフィギュアの劣化を少しでも遅らせ、長く楽しむための重要なポイントをまとめます。
- フィギュアの劣化は避けられないが対策で遅らせることは可能
- 主な劣化要因は光(紫外線)・熱・湿気・ほこりの4つ
- 直射日光や蛍光灯の光は色褪せや変色の原因になる
- 夏の室温など高温環境はフィギュアを変形させるリスクがある
- 湿気はカビやベタつきを助長するため風通しが重要
- ほこりは汚れだけでなくカビや固着の原因にもなる
- 未開封での長期保管は可塑剤が充満し劣化を早める
- 「未開封なら安全」という情報はガセである可能性が高い
- フィギュアのベタつきは素材に含まれる可塑剤が原因
- 劣化対策の基本は保管環境を整えること
- ディスプレイケースの使用はほこりや衝撃対策に最も効果的
- 窓際に飾る際はUVカットフィルムや遮光カーテンを活用する
- 照明は紫外線が少ないLEDが望ましい
- ポリストーン製フィギュアは劣化に強いが衝撃に弱い
- 定期的なメンテナンスと清掃を心がける