大切なフィギュアを久しぶりに手に取ったら、表面がなんだかベタベタする…そんな経験はありませんか。
このフィギュアのべたつきは、見た目や手触りが悪いだけでなく、放置するとホコリが付着しやすくなるなど、コレクションの価値を損なう原因にもなります。
この不快なべたつきの原因を正しく理解し、どうすればべたつきを落とすことができるのか、多くの方が悩んでいるのではないでしょうか。
特に、最近注目されているアルカリ電解水はべたつきに効果があるのか、具体的にはアルカリ電解水で落とせますか?という直接的な疑問や、使用後にアルカリ電解水はベタベタしますか?といった使用感に関する不安もあるでしょう。
べたつきを落とす方法としては、重曹やセスキ炭酸ソーダ、あるいは専用のクリーナーを使う選択肢もありますが、一方で安易にアルコール製品を使用すると失敗や後悔につながることも少なくありません。
そこでこの記事では、フィギュアのべたつき対策として、アルカリ電解水を中心とした正しい洗浄方法を詳しく解説します。
さらに、将来的なべたつき防止に役立つトップコートの知識や、日頃からできる保管の工夫まで、あなたのコレクションを美しく保つための情報を網羅的にお届けします。
- フィギュアがべたつく根本的な原因
- アルカリ電解水を使った正しいべたつきの除去方法
- アルカリ電解水以外の安全な洗浄方法との比較
- 大切なフィギュアをべたつきから守るための予防策
フィギュアのべたつきはアルカリ電解水で落ちる?
- そもそもフィギュアのべたつき原因とは?
- べたつきはアルカリ電解水で落とせますか?
- アルカリ電解水はベタベタしますか?
- アルカリ電解水でのべたつき落とす手順
- 重曹を使った落とし方
- セスキ炭酸ソーダも効果的
そもそもフィギュアのべたつき原因とは?

フィギュアの表面に現れる不快なべたつきの主な原因は、素材に含まれる「可塑剤(かそざい)」という化学物質が時間の経過と共に表面に染み出してくることにあります。
可塑剤とは、フィギュアの主原料であるPVC(ポリ塩化ビニル)などの硬いプラスチックに柔軟性を与え、複雑な形状への加工を容易にするために添加される物質です。言ってしまえば、フィギュアのしなやかさや柔らかさは、この可塑剤によって保たれています。
しかし、この可塑剤は永久に素材内部に留まっているわけではありません。製造から時間が経つにつれて、あるいは特定の環境下に置かれることで、徐々に気化しながらフィギュアの表面へと移行します。この現象は「ブリードアウト」と呼ばれています。
表面に染み出した可塑剤が空気に触れることで、べたつきとして感じられるようになるのです。特に、以下のような環境はブリードアウトを加速させるため注意が必要です。
- 高温多湿な環境: 温度や湿度が高いと、素材内部の可塑剤の動きが活発になり、表面へ染み出しやすくなります。
- 密閉された空間: 箱の中や密閉性の高いケースに長期間保管すると、気化した可塑剤の逃げ場がなくなり、フィギュア表面に再付着してしまいます。
- 直射日光(紫外線): 紫外線はフィギュアの素材自体を劣化させ、化学変化を促進することでブリードアウトを引き起こしやすくします。
このように、べたつきはフィギュアが汚れているというよりは、素材の特性による経年変化の一種と考えることができます。そのため、未開封のまま保管していても発生する可能性は十分にあります。
べたつきはアルカリ電解水で落とせますか?
はい、フィギュアのべたつきはアルカリ電解水を使って落とすことが可能です。特に、中性洗剤を使った洗浄で取り切れなかった、より頑固なべたつきに対して効果を発揮します。
なぜなら、アルカリ電解水は強力なアルカリ性の液体であり、油脂やタンパク質といった酸性の汚れを分解する力に優れているからです。フィギュアの表面に染み出した可塑剤によるべたつきは、油脂汚れと似た性質を持っているため、アルカリ電解水が効果的に作用し、汚れを浮かせて除去しやすくしてくれます。
また、アルカリ電解水の多くはスプレーボトルに入って販売されており、100円ショップなどでも手軽に入手できるのが魅力です。べたつきが気になる部分に直接吹きかけて使用できるため、作業が非常に簡単な点もメリットと言えます。
ただし、その洗浄力の高さから、フィギュアの塗装に影響を与える可能性もゼロではありません。特にデリケートな塗装が施されているフィギュアや、古いフィギュアに使用する場合は、まずパーツの裏側や足の裏など、目立たない部分で試してから全体に使用することが大切です。
アルカリ電解水はベタベタしますか?

いいえ、アルカリ電解水を正しく使用し、洗浄後にしっかりと洗い流せば、フィギュアの表面がベタベタすることはありません。むしろ、原因となっていたべたつきが除去されることで、さらっとした本来の質感を取り戻すことができます。
アルカリ電解水の主成分は「水」です。電気分解によってアルカリ性に調整されていますが、洗剤のように界面活性剤などの化学物質が含まれているわけではないため、成分が表面に残留しにくいという特徴があります。
もし、アルカリ電解水で洗浄した後にぬるつきやベタつきが残っているように感じる場合、それは分解された可塑剤や汚れがまだ完全に洗い流されていない状態と考えられます。このぬるつきがなくなるまで、流水やぬるま湯で丁寧にすすぐ作業を行ってください。
逆に言えば、すすぎが不十分だと、分解された汚れが表面に残ってしまったり、水道水に含まれるミネラル分(カルキ)が乾燥後に白い跡として浮き出てきたりする可能性があります。洗浄後のすすぎと、柔らかい布での水分の拭き取りは、丁寧に行うことが仕上げの鍵となります。
アルカリ電解水でのべたつき落とす手順
アルカリ電解水を使ってフィギュアのべたつきを落とす作業は、いくつかの簡単なステップで行えます。大切なフィギュアを傷つけないよう、以下の手順と注意点を守って慎重に進めてください。
準備するもの
- アルカリ電解水(スプレータイプの製品)
- フィギュアを入れるための容器(洗面器やバケツなど)
- 柔らかい布(マイクロファイバークロスなど)
- ゴム手袋(肌が弱い場合)
手順1:フィギュアに吹きかける
まず、フィギュアを可能な範囲でパーツごとに分解し、容器の中に入れます。
べたつきが気になる部分を中心に、フィギュア全体にアルカリ電解水を直接スプレーします。このとき、一箇所に集中して大量に吹きかけるのではなく、まんべんなく行き渡るようにしましょう。
手順2:時間を置く
スプレーした後、すぐにこすり始める必要はありません。アルカリ電解水がべたつき成分と反応して分解するまで、数分間そのまま放置します。
頑固なべたつきの場合は、5分から10分程度置くとより効果的です。時間が経つと、分解された可塑剤でフィギュアの表面がぬるぬるとしてきますが、これが汚れが浮いてきたサインです。
手順3:洗い流す
フィギュアの表面がぬるぬるしてきたら、流水または40℃以下のぬるま湯で優しく洗い流します。このとき、指の腹を使って表面をそっとなでるようにすると、残った汚れが落ちやすくなります。
ブラシなど硬いものでこすると塗装を傷つける原因になるため、絶対に使用しないでください。ぬるつきが完全になくなるまで、十分にすすぎましょう。
手順4:水気を拭き取り乾燥させる
すすぎが終わったら、糸くずの出にくい柔らかい布で、フィギュアの表面の水分を優しく押さえるように拭き取ります。溝などの細かい部分は、布の角や綿棒を使って丁寧に水分を除去してください。
拭き取り後、風通しの良い日陰でパーツが完全に乾くまで自然乾燥させれば作業は完了です。
重曹を使った落とし方

アルカリ電解水と同様に、重曹もフィギュアのべたつき除去に有効なアイテムの一つです。重曹は弱アルカリ性の性質を持っているため、油脂性の汚れである可塑剤を中和し、分解する効果が期待できます。
ただし、重曹を使用する際には注意点があります。重曹は粒子が細かいため、水に溶かしてペースト状にして直接こすると、研磨剤のように作用してフィギュアの表面に細かな傷をつけてしまう恐れがあります。特に、光沢のある塗装面ではツヤが失われる原因にもなりかねません。
そのため、重曹を使う場合は「こする」のではなく「つけ置き」で汚れを浮かせる方法が安全です。
重曹水の作り方と洗浄手順
- 洗面器などの容器に40℃以下のぬるま湯を用意します。
- ぬるま湯1リットルに対して、大さじ1杯程度の重曹を入れ、よくかき混ぜて完全に溶かします。
- 分解したフィギュアのパーツを重曹水の中に沈め、数時間から半日ほどつけ置きします。
- 時間が経ったらパーツを取り出し、指の腹で優しく表面をなで洗いします。
- 最後に、流水で重曹の成分と浮き出た汚れを完全に洗い流し、柔らかい布で水気を拭き取ってから自然乾燥させてください。
この方法であれば、研磨による傷のリスクを避けながら、重曹のアルカリ性の力で安全にべたつきを落とすことが可能です。
セスキ炭酸ソーダも効果的
セスキ炭酸ソーダも、重曹と同じくアルカリ性の性質を持つため、フィギュアのべたつき落としに活用できます。むしろ、重曹よりもアルカリの度合いが強いため、より洗浄力が高いのが特徴です。
セスキ炭酸ソーダは、重曹と比較して約10倍水に溶けやすいという性質も持っており、洗浄液を手軽に作ることができます。中性洗剤や重曹では落ちなかった、長年の蓄積による頑固なべたつきに対して試してみる価値があるでしょう。
使い方は重曹とほぼ同じで、ぬるま湯に溶かして洗浄液を作り、フィギュアをつけ置きする方法が基本となります。
セスキ炭酸ソーダ水の作り方と洗浄手順
- 洗面器などの容器に40℃以下のぬるま湯を用意します。
- ぬるま湯500mlに対して、小さじ1杯程度のセスキ炭酸ソーダを入れ、よくかき混ぜて溶かします。
- 分解したフィギュアのパーツを洗浄液に沈め、数時間つけ置きします。
- パーツを取り出し、流水で十分にすすぎながら指の腹で優しく洗います。
- 洗浄後、柔らかい布で水気を拭き取り、風通しの良い日陰で完全に乾燥させます。
アルカリ性が強い分、塗装への影響も重曹より出やすい可能性があります。肌への刺激も強いため、作業時はゴム手袋を着用することをおすすめします。また、使用前には必ず目立たない部分で試すようにしてください。
アイテム | アルカリ性の強さ(pH目安) | 特徴 |
重曹 | 弱い (pH 8.2) | 粒子が細かく研磨作用があるため、こすり洗いには不向き。環境に優しく、比較的安全に使える。 |
セスキ炭酸ソーダ | 中程度 (pH 9.8) | 重曹よりも洗浄力が高く、水に溶けやすい。頑固なべたつきに効果的だが、塗装への影響に注意が必要。 |
アルカリ電解水 | 強い (pH 12.0~13.0) | スプレー式で手軽に使える。洗浄力が高く、除菌・消臭効果も期待できるが、最も塗装への影響を慎重に確認すべき。 |
フィギュアのべたつき対策とアルカリ電解水の注意点
- 専用クリーナーを使うメリット
- アルコールの使用は避けるべき
- べたつき防止にトップコートは有効か
- 日頃からできるべたつき防止テクニック
- フィギュアのべたつきとアルカリ電解水の総まとめ
専用クリーナーを使うメリット

フィギュアのべたつきを落とす際、アルカリ電解水や重曹などの家庭用品は手軽で効果的ですが、より安全性を重視するならば、専用のクリーナーを使用するという選択肢があります。
専用クリーナーの最大のメリットは、フィギュアの素材であるPVCやABS、そしてその上の繊細な塗装を傷めにくいように成分が調整されている点です。
フィギュアの特性を熟知したメーカーが開発しているため、塗装を溶かしてしまったり、素材を劣化させたりするリスクを最小限に抑えながら、べたつきの原因である可塑剤を効果的に除去できるように設計されています。
例えば、ジャパンケミテック有限会社の「goキング・ベタトルV」といった製品は、PVCやソフビのべたつき除去に特化しており、コレクターの間で定評があります。
もちろん、デメリットも存在します。一つは価格面で、100円ショップで手に入るアルカリ電解水などと比較すると高価になります。また、入手性もホームセンターや模型店、オンラインストアなどに限られる場合があります。
しかし、限定品や思い入れの深い高価なフィギュアなど、絶対に失敗したくないコレクションに対しては、専用クリーナーが提供する「安心感」は大きな価値を持つと言えるでしょう。
汎用品の使用に不安を感じる場合は、こうした専用品の活用を検討するのが賢明です。
アルコールの使用は避けるべき
フィギュアのべたつきを除去する方法を調べる中で、アルコールを使えば綺麗になるという情報を目にすることがあるかもしれませんが、これは絶対に避けるべき方法です。
なぜならば、アルコール(エタノールなど)には非常に強い溶解作用があるからです。この作用は、フィギュアの表面を保護している塗膜や、塗装そのものを簡単に溶かしてしまいます。
除菌用のアルコールスプレーや、アルコール成分が含まれたウェットティッシュなどでフィギュアを拭いてしまうと、以下のような深刻なダメージを引き起こす可能性があります。
- 塗装の溶解・色落ち: 塗装が溶けてしまい、色が滲んだり、剥がれたりします。
- 変色: 塗料や素材の化学組成が変化し、本来の色とは異なる色に変色してしまうことがあります。
- 素材の劣化: PVCなどのプラスチック素材を脆くさせ、ひび割れなどの原因になることも考えられます。
これらのダメージは一度発生すると、元に戻すことはほぼ不可能です。手軽に手に入るため安易に使ってしまいがちですが、アルコールはフィギュアにとって劇薬とも言える存在です。
べたつきが気になったとしても、アルコール成分を含む製品の使用は絶対にやめましょう。
べたつき防止にトップコートは有効か

フィギュアのべたつきを未然に防ぐ方法として、模型制作用の「トップコート」を表面に吹き付けるというテクニックがあります。これは、フィギュアの表面にクリア塗料の膜を一層作ることで、可塑剤が染み出してくるのを物理的に防ごうという考え方です。
この方法は、正しく施工すればべたつき防止に一定の効果が期待できます。また、トップコートには「光沢」「半光沢」「つや消し」などの種類があり、フィギュアの質感を自分好みに調整できるというメリットもあります。
しかし、この方法は多くのデメリットとリスクを伴うため、特に初心者には推奨しにくい上級者向けの対策と言えます。
トップコートのリスクと注意点
- 質感の変化: 元の製品の質感が完全に変わってしまいます。特に「つや消し」を吹くと、肌の透明感などが失われることがあります。
- 失敗のリスク: 均一にスプレーするには技術が必要です。吹きムラができたり、湿度が高い日に作業して表面が白く濁ってしまう「白化(カブリ)」が起きたりすると、元に戻すのは困難です。
- コート剤自体の劣化: トップコートの塗膜も永久的なものではなく、時間と共に黄ばんだり、ひび割れたりする可能性があります。
- 価値の低下: メーカー出荷時の状態ではなくなるため、将来的に売却を考えた場合、改造品と見なされて価値が下がる可能性があります。
このように、トップコートによる予防策はメリットもありますが、それ以上に大きなリスクを伴います。安易に試すのではなく、あくまで最終手段の一つとして、これらのリスクを十分に理解した上で自己責任で行う必要があります。

日頃からできるべたつき防止テクニック
前述の通り、フィギュアのべたつきは洗浄によって除去できますが、最も理想的なのは、そもそもべたつきが発生しにくい環境で保管することです。
日頃の保管方法に少し気を配るだけで、可塑剤のブリードアウトを大幅に抑制し、大切なフィギュアを長期間美しい状態に保つことが可能になります。
べたつき防止の鍵は、「高温多湿」「直射日光」「密閉空間」の3つを避けることです。
高温多湿を避ける
温度や湿度が高い場所は、可塑剤の活動を活発にしてしまいます。フィギュアは、年間を通して温度と湿度が比較的安定している場所に保管するのが理想です。
夏場の室温上昇や、梅雨時期の湿気には特に注意しましょう。エアコンで室温を管理したり、コレクションケースの中に市販の除湿剤を置いたりするだけでも効果があります。
直射日光を避ける
直射日光に含まれる紫外線は、べたつきを促進するだけでなく、色褪せや変色の直接的な原因にもなります。フィギュアは窓際に置かず、日光が直接当たらない場所に飾りましょう。
コレクションケースで飾る場合は、UV(紫外線)カット機能付きのアクリルケースを選ぶと、より効果的にフィギュアを保護できます。

密閉空間を避ける
購入時の箱に入れたまま保管したり、気密性の高いケースに長期間入れたりしていると、気化した可塑剤の逃げ場がなくなってしまいます。これがフィギュア表面に留まり、べたつきの原因となります。
これを防ぐためには、定期的に箱やケースからフィギュアを取り出し、空気に触れさせてあげることが大切です。月に1回程度、風通しの良い場所で「虫干し」をするようなイメージで換気を行うと、べたつきの発生を効果的に防げます。
フィギュアのべたつきとアルカリ電解水の総まとめ

この記事のポイントをまとめます。
- フィギュアのべたつきの主な原因は可塑剤の染み出し
- 高温多湿や直射日光、密閉空間はべたつきを加速させる
- アルカリ電解水は頑固なべたつき除去に効果的
- アルカリ電解水は100円ショップなどでも手軽に入手可能
- 使用前には必ず目立たない場所で塗装への影響をテストする
- アルカリ電解水は正しくすすげば使用後にベタベタしない
- 洗浄後はぬるつきがなくなるまで十分に水ですすぎ乾燥させる
- 重曹やセスキ炭酸ソーダもアルカリ性の力でべたつきを落とす代替案になる
- アルカリ性が強い製品ほど洗浄力は高いが塗装への注意が必要
- 専用クリーナーは高価だが最も安全性が高い選択肢の一つ
- アルコールの使用は塗装を溶かすため絶対に避ける
- トップコートによるべたつき予防はリスクを伴う上級者向けの方法
- べたつきを根本から防ぐには日頃の保管環境が最も重要
- 定期的な換気は可塑剤がフィギュア表面に留まるのを防ぐ
- UVカット機能付きのケースは紫外線による劣化対策に有効